シニアニュース 午前

成人の8人に1人が直面する慢性腎臓病、10秒の尻上げと早歩きで守る新常識

国内で推計約1480万人、成人の8人に1人が該当する慢性腎臓病。かつての「安静第一」から「適度な運動で腎機能を守る」へと常識が変わりました。10秒キープの尻上げ運動や1日合計30分の早歩きなど、今日からできる運動療法のポイントを解説します。

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健康診断で腎機能の数値を指摘され、「これ以上悪くしないためにはどうすればよいのか」と不安を感じているシニア世代の方は少なくありません。かつて医療現場では「腎臓が悪い人は運動を控えて安静に過ごすのが第一」と指導されてきましたが、近年の医学研究によってその常識が大きく覆されています。現在、日本国内における慢性腎臓病(CKD)の推計患者数は約1480万人に達しており、これは成人のおよそ8人に1人にあたる非常に身近な健康課題です。

残された腎機能を維持し、人工透析への進行を防ぐ鍵として注目されているのが「適度な運動」です。医療の現場で急速に普及している運動療法の考え方と、自宅で手軽に実践できる具体的な取り組みについて詳しく見ていきましょう。

数字で見る:成人の8人に1人が直面する慢性腎臓病の現状

慢性腎臓病(CKD)は初期の自覚症状がほとんどないため、「沈黙の臓器」とも呼ばれる腎臓の異変に気づかないまま進行してしまうケースが後を絶ちません。日本国内の推計患者数は約1480万人にのぼり、成人のおよそ8人に1人が該当するとされています。

腎臓は毛細血管の塊であり、血管の老化がダイレクトにそのろ過機能へ影響を与えます。病気を恐れるあまり過度な安静を続けて体を動かさずにいると、下半身の筋肉量が減少し、血糖値や血圧が上昇してかえって腎臓に負担をかけるという悪循環に陥りやすくなります。60代からの健康寿命を延ばすためにも、腎臓を守る正しい知識を持つことが重要です。

「安静第一」から「適度な運動」へ:覆った医療常識

かつての医療では、「運動を行うと一時的に尿中のタンパクが増え、腎臓に負担がかかる」と考えられていたため、運動制限や安静指導が広く行われていました。しかし、東北大学名誉教授の上月正博医師らによる「腎臓リハビリテーション」の研究をはじめとする臨床の積み重ねにより、適切な強度の運動が血管の内皮機能を高め、腎臓のろ過機能を保護することが実証されました。

現在では、適度な運動によって全身の血流を促し、残された腎機能を守ることが新たな常識として医療現場に定着しつつあります。安静にし続けるよりも、体に合った運動を継続するほうが、全身の血管や腎臓の健康を長く保つことにつながります。

自宅で手軽に実践できる運動法:尻上げ運動と早歩き

腎機能をサポートするために推奨されているのが、下肢や大殿筋を無理なく刺激する運動です。特別な器具を使わずに自宅で今日から始められる方法として、「10秒間のヒップリフト(尻上げ運動)」と「早歩き」が注目されています。

自宅で行う尻上げ運動の推奨回数目安
0246推奨下限推奨下限 回数(1回10秒キープ): 3回3推奨上限推奨上限 回数(1回10秒キープ): 5回5(回)推奨下限推奨下限 回数(1回10秒キープ): 3回3回推奨上限推奨上限 回数(1回10秒キープ): 5回5回

出典: 介護ポストセブン(東北大学名誉教授・上月正博氏の公開臨床研究)

表で見る
回数(1回10秒キープ)
推奨下限3回
推奨上限5回

尻上げ運動は、布団やマットの上に仰向けになり、膝を立てた状態で腰をゆっくり持ち上げて10秒間キープする動作を基本とします。これを3〜5回繰り返すことで、効率的にお尻まわりの筋肉を刺激し、血流の改善を促します。

運動の種類 推奨される具体的な実践方法 期待される働きとポイント
尻上げ運動(ヒップリフト) 布団やマットの上で仰向けになり膝を立てて腰を持ち上げ、10秒キープ×3〜5回 大殿筋や下肢の筋肉を刺激し、血流を促して糸球体のろ過機能をサポート
早歩き 普段の散歩や買い物などで歩幅を少し広げ、息が少し弾む程度で1日合計30分 全身の血流を促し、血管の内皮機能を高めて腎臓への負担を軽減

日常の外出や散歩の際には、少し歩幅を広げて息が弾む程度の「早歩き」を意識し、1日合計30分を目指して歩くことが推奨されています。まとめて30分歩くのが難しい場合でも、日々の移動を組み合わせて合計30分になれば十分な効果が期待できます。

欧米の先進事例:医師が「運動処方箋」を発行する標準的治療

海外の医療現場においても、運動療法の重要性は高く評価されています。米国腎臓病財団(NKF)や欧州腎臓学会(ERA)では、慢性腎臓病患者に対する運動療法のガイドラインを策定しており、心血管病の予防と腎機能低下スピードの抑制を目的として、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用を公式に推奨しています。

欧米では単なる生活指導にとどまらず、医師が患者の状態に合わせて具体的な運動内容を指示する「運動処方箋」を発行する体制が標準化しています。週に数回のウォーキングや軽い筋力トレーニングを生活習慣に組み込むことで、人工透析への移行リスクを大幅に遅らせる成果が報告されています。投薬治療や食事療法と並び、運動が欠かせない治療の一環として位置づけられています。

運動を安全に生活へ取り入れるためのチェックリスト

腎機能の状態や持病の有無によって、適した運動強度は人それぞれ異なります。安全に運動習慣を始めるために、以下の点を確認してみましょう。

  • ☐ 健康診断や血液検査の結果で現在のeGFR(推算糸球体ろ過量)数値を確認したか
  • ☐ 運動を始める前にかかりつけ医や腎臓内科の専門医に相談したか
  • ☐ 布団やマットの上など、転倒の心配がない安定した場所で行っているか
  • ☐ 尻上げ運動は無理のない高さで腰を持ち上げ、10秒キープ×3〜5回の範囲で行っているか
  • ☐ 早歩きは息が少し弾む程度を目安とし、1日合計30分を目標に無理なく続けているか
  • ☐ 体調が優れない日や関節に痛みがあるときは無理をせず休む判断をしているか

決して無理な負荷をかけず、ご自身のペースで日々の生活の中に小さな運動習慣を定着させていくことが、大切な腎臓を長く元気に保つ秘訣です。

この記事の情報は、2026年10月27日配信の介護ポストセブン記事、および日本腎臓リハビリテーション学会/東北大学名誉教授・上月正博氏の公開臨床研究に基づいています。慢性腎臓病の病期や心臓の状態により適切な運動強度は異なりますので、運動療法を始める際は必ず医師にご相談ください。

参考資料

  • 介護ポストセブン「《名医考案の》腎機能復活を目指す「尻上げ10秒」と「早歩き」 60代から始める“健康寿命をのばす”新常識」(2026年10月27日配信) https://www.kaigo-postseven.com/
  • 日本腎臓リハビリテーション学会/東北大学名誉教授・上月正博氏 公開臨床研究 https://www.rean-jpn.jp/

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